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平成14年3月1日(167号)
  あれは昭和45年だった。一もう四半世紀以上も前のことだ。西鉄ヲイオンズ、池永正明は、黒い霧事件にかかかったとして、プロ野球から永久追放になつた。入団六年目、投手として、将来、数々の記録を塗り替えるに違いない逸材だった。暴力団がらみの野球賭博で、事前に勝ち負けを仕組み、先発ピッチャーを漏らしたり、手心を加えてわざと負けるようにする八百長が行われていたとして、西鉄ライオンズの選手を中心に六人が処分されたのだ。その中に、池永正明の名前があった。田中勉という中日の選手に、百万円渡された。話があった八百長は断つたのだが、金は強引に押しつけられた。前に金を貸していたこともあり、軽い気持ちだつた。それが大事件に発展するとは夢にも思わなかった。若かったし、体育会系の上下関係では、上からの指示は絶対的で、逆らえない。悪夢のような出来事だった。池永正明は、これからという時、24歳で、夢を絶たれたのである。以来、このことヘの言い訳も申し立ても何もしなかつた。沈黙を保ちつづけ、生きていくための生業を、福岡・中州で、スナック「ドーべル」を開いて、立てた。地元、福岡での、池永正明に対する非難は想像を絶した。店内で客は平気で也永正明を罵った。それにもじっと耐えた。プロゴルファーのジャンボ尾崎は、甲子園優勝投手で、池永正明と同じ西鉄ヲイオンズに入団する。ブルぺンで池永正明と一緒に投げていて、実力の違いを見せつけられ、あっさりとプロ野球を見限る。球の質が違つた。「池永正明がいなければ俺はプロゴルフの世界には行かなかつた」、と今でも交流が続く。あれから30年たつた。『もう許してもいいんではないか、という声が地元福岡や、出身校の下関商業OBたちの間からおこった。1998年、「池永正明復権18万人署名運動実行委員会」は、18万人の署名をプロ野球コミッショナーに提出したが、却下された。池永正明だけの裁定を覆す訳にはいかない、という理由だ。当時、墨い霧事件を、プロ野球機構としては、池永正明をスケープ一ゴードにすることで、解決せざるをえなかったのだ。ところが、プロ野球界の影のドン、読売新聞社の渡辺恒雄社長も池永正明の復権を認めエもいい、といいだした。昨年末、プロ野球OBたちが組織して始まった「プロ野球マス一ターズ」に出場。福岡ドームのマウンドを踏んで、ファンの前に雄姿を表した。池永正明の中学時代の恩師は、。事件発覚からずっと、彼をささえつづける。娘が結婚するとき、初めて、「汚名が晴れないだろうか」と、池永は思師に打ち明けたという。「もういいんじゃあないですか」、恩師の目にはうっすらと涙がにじむ。池永正明復権ヘ、世論の風向きはすこしずつ変わりだした。

平成14年3月15日(168号)
   いよいよ鈴木宗男議員の証人喚問が行われる。参考人招致では、まだ余裕があったようだが、外務省の内部文書を共産党の佐々木議員に突きつけられて、表情ががらりと変わる。それをきっかけに、こんなにあるのかと思うほど、数々の疑惑が噴出した。ひとむかし前に、さんざんたたかれた「政治と官僚と企業の癒着」の典型である。これがこまかすぎて、よくまーこんなことまでぬけねけとおやりになったものだと思うぐらい、「疑惑のデパート」なのだ。「ミニ金丸」、「ミニ角栄」といわれ、コマネズミ、日本一ダーティーな政治家、と形容される。週刊新潮に、ジャーナリストの加藤昭さんが、「鈴木宗男研究」を連載した。週刊誌では最近にはない 万部の増刷で、発行元の新潮社も笑いが止まらない。最近では、こんな政治家もちょっとめずらしい。それにしても、あんなに自民党体質が問われていたころ、影でここまでよくもやれたもんだ、と妙に感心してしまう。橋本元総理の、心臓病手術の裏話にも、鈴木宗男さんは登場される。前回の小泉さんと争った総裁選挙に、2億円用意したのに、惨敗。そのことで、かなりプレッシャーをかけられて、橋本元総理は倒れた。そういううわさ話も何か本当のように思わせてしまう。◆もう一方の政治家の話題では、加藤紘一さんの身辺である。秘書の脱税が発覚し、摘発された。この秘書は、加藤紘一を総理総裁にするために、として業者たちから多額の資金をあつめて、その一部を私物化していた。安室奈美恵さんが所属していた芸能プロ「ライジングプロ」に、脱税捜査が入った。その平代表から佐藤秘書は1億5000万円の資金提供を受けていた。プロダクションの脱税の捜査がどのくらいすすんでいるか、確認を依頼された見返りだった。これを機に、政界では、加藤紘一議員の「金庫番」といれている佐藤三郎私設秘書の身辺の捜査が始まり、ついに逮捕。どうも、田中真紀子さんが外務大臣をやめさせられてから、「小泉旋風」の雲行きがおかしくなった。「三方一両損」の裁きがあったあと、小泉さんにとっては風が逆のほうに吹き出した。追い詰められている鈴木宗男議員の決め手は外務省の内部文書の漏洩から、である。田中真紀子さんをいじめぬいた影にやっぱり「ムネオ」がいたんだ、田中さんはやめることはなかったんだ、と世間はそうとる。構造改革のパートナーで、長年の盟友、自民党のプリンスといわれた加藤紘一議員までも、あこぎに金集めに邁進していた。自民党の古い体質がこうまで、暴露されると、これで小泉さん、本当に改革ができるのか、国民はまったく信用できなくなってしまった。
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