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平成14年3月5日(169号)
  今年の阪神は何か違う。今までの「ダメトラ」が、「猛虎」に戻ったようだ。開幕スタートはあっという間に、宿敵巨人を連破。初陣、ジャイアンツの若大将・原監督は、手も足も出なかった。ひょっとすると、星野阪神はおお化けに化けたのかもしれない。監督が変わるとチームもこんなに変わるのだ。メンバーも若い。シーズンの長丁場、どんどんチームの力も伸びていくだろう。ところで、東京ドーム、巨人阪神2連戦に沸いているとき、横浜市では市長選挙の終盤を迎え、現職の高秀秀信氏が、中田宏前衆議院議員に、予想を裏切って、破れるという地方の反乱が起こっていた。新聞の見出しには、中田、巨人・高秀を倒す、である。これは、開幕戦、阪神が巨人を破ったどころではない。共産党以外はオール与党。他の首長選挙では、反乱が起きても、350万の大横浜は、現職の力は揺るぎない、と高秀陣営ではたかを括っていたにちがいない。中田さんは、1か月前に出馬を決意。まだ37歳の若さである。受けて立つ現職の高秀さんは72歳。無難に三期を務めた。四期目に挑戦するという意欲をにじませた頃、敵はまったく見えなかった。2002年ワールドカップの成功を花道に、市政の総仕上げで、勇退。後継者にバトンタッチ、という目算を描いていたにちがいない。ところが、国の方の政治が、田中真紀子さん更迭後、急激におかしくなったのである。真紀子さんの天敵、鈴木宗男自民党議員は離党させられ、数々の疑惑が外務省内部から暴露される。小泉さんの盟友、自民党のプリンス・元幹事長加藤紘一さんまでが、秘書の脱税から、政治資金として集めたお金を自宅家賃などに9000万円も流用していたということが発覚し、党を離れる。そうしているうちに、社民党も、エース辻元清美さんに、政策秘書の給料流用事件が発覚し、議員辞職。クリーンのはずの土井さんや加藤さんの周辺からの「黒い霧」発生なのだから、国民はウンザリ、で、怒り心頭なのである。小泉さんの応援は、お膝元の神奈川なのに、今回は、ご遠慮願ったという。まったく、浮き沈みの激しい世界ではある。そんな既成政党のミスに乗じて、中田さんは、奇跡の逆転勝利をおさめたのである。2万票の僅少差。ご両人の地元・青葉区の得票では、中田さんは高秀さんを大きく引き離した。青葉区から、中央の政治へ「NO!」と答えを出したといっていい。ただ、横浜市議会は、中田さんにとってはオール野党になる。市民に掲げた公約を実現するための議会対策。中田新市長の真価が問われるのは、これからである。

平成14年4月19日(170号)
 高橋圭三さんが亡くなった。83歳だったそうだ。テレビ草創期のNHKのアナウンサーで、「私の秘密」の名司会者だった。「事実は小説より奇なりと申しまして、世の中には変わった珍しい経験をお持ちのかたがたくさんいらっしゃいます」という名文句で始まった。「どうもどうも、司会の高橋圭三です」と、人懐っこい笑顔とこのフレーズは、視聴者の人気を誘った。それまで、茶の間の主役はラジオだった。そのラジオでも、高橋圭三節はさえわたっていた。昭和24年に始まった「私は誰でしょう」の司会で、声は全国的に知られていた。それが、テレビの普及とともに、視聴者参加の番組、「私の秘密」の司会者として茶の間に登場すると、たちまちのうちに、人気者になった。きまじめな中の軽妙洒脱な語り口と、洗練された都会的なセンスは、この「私の秘密」と一緒に、高橋圭三さんの名前は日本中だれでも知っていた。当時、テレビはNHKが一歩先に行っていて民間の放送局はあとを追うような形だった。人材豊富なNHKのアナウンサーの中には、もう一人、宮田輝アナウンサーがいて、「三つの歌」の司会で、この方の人気もすざましかった。ラジオでは、「素人のど自慢」、「三つの歌」の宮田輝アナウンサーとしてずっと全国に親しまれていた。高橋圭三さんと同じように、「三つの歌」もテレビの番組に組み込まれると、宮田輝さんの、丸顔にニコニコした親しみのある風貌は、地方の人たちの心を捕らえた。そのころ、お二人は人気NHKアナウンサーの双璧だった。「おばんです!」といって登場した宮田さんと、「どうもどうも」の高橋さん、お二人でよく暮れの紅白歌合戦の司会をされていた。今の紅白とは桁違いで、司会者どうしのやりとりも白熱を帯びていた。どういう訳か、赤組・女性軍の司会が宮田さんで、白組・男性の司会は高橋圭三さんだった。宮田さんのほうが地方の出身で、高橋圭三さんは、てっきり江戸っ子だと思っていた。ところが、高橋圭三さんは、岩手県花巻の出身で、アナウンサーとしては、東北訛りは致命的だった。なんとか克服しなければならない。その苦労は並大抵ではない。「よくトイレのなかで東北訛を直すために、発声練習をされていました」、と黒柳徹子さん。「アナウンサーは日本語の手本にならなければならない。ら≠ハき言葉や服装の乱れはどうにかならないか。バラエティー番組やスポーツ中継は見るに耐えられない。聞かせ所で興奮するのは素人。」(サンスポ/4・ )晩年は日本語の乱れに苦言を呈していた。「虫眼鏡で調べて、望遠鏡で喋る」これが高橋圭三さんのモットーだった。参議院議員を一期務めた。最近は、好きな仲間とマージャンを囲む、悠々自適の毎日だった。遺体の側には大好きだったマージャン牌「白発中」が添えられた、という。
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