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平成12年12月15日(138号)

20 世紀もいよいよ幕を閉じる。今世紀の重大事件ベスト 、20 世紀最後の秘話などなど、雑誌の特集も佳境に入ってきた。今世紀初頭のできごととしては、一九〇四年に勃発した日露戦争が、何かその後を暗示している。「天気晴朗なれど波高し」。日本の 20世紀は、何と愚かなスタートだったことか。二百三高地というヘヤースタイルが風靡したという。一九〇一年は明治三四年である。明治時代の最後の一〇年間が今世紀の始めを彩る。一九一〇年代は、大正時代。大正デモクラシーというのは、薩摩や長州が権力の中枢にある藩閥政治への抵抗、である。流行歌には、「カチューシャの唄」、「ゴンドラの唄」、「コロッケの唄」、「金色夜叉」などがあり、街ではタクシーが流行りだし、自動車事故が問題化している。スキー場ができて、ピアノを習わせるという家庭が増えた。早稲田と慶応が女子に門戸を開く。週刊朝日、サンディー毎日、文芸春秋が創刊されたのは大正一〇年。その二年後、関東大震災(一九二三年)が起きる。昭和の幕開けは、一九二七年。「ぼんやりとした不安」と言い残して、芥川竜之介自殺。アメリカから「トーキー映画」が輸入される。映画の入場料は 銭だった。一九三二年、チャップリンが来日した。山下公園前の「氷川丸」には、チャップリンが使用した船室がそのまま残っている。上海事変勃発。翌年、国連脱退。そろそろ、日本は、国際的に孤立状態に陥って行く。一九三四年、アメリカ大リーグが来日し、ベーブルースがやってきた。沢村栄治が、なみいる強打者をばったばったと三振にしとめるという快挙をなしとげる。日本人の野球熱にいっそう拍車をかけていった。一九三九年、双葉山六十九連勝。六年間一度も負けなかった。世相は、「国境の町」、「ああそれなのに」、「愛国行進曲」、「暁に祈る」などの唄が流行り、「千人針」、「パーマやめましょ」、「物価統制令」、「白米・ネオン・パーマ禁止」「ぜいたくは敵だ」…こういった言葉がマスコミに使われだした。一九三八年、国家総動員法が発令。一九四一年、十二月八日、連合艦隊指令長官・山本五十六から、「ニイタカヤマノボレ1208」の打電を受けた日本軍は、ハワイの真珠湾を攻撃し、太平洋戦争へ突入していった。一九四五年、八月十五日、「・・・堪え難きを堪え忍び難きを忍び以って万世の為に太平を開かんと欲す」、天皇の言葉で、戦いは終わる。ここまでが、 世紀の前半。「我々が四十五歳であるのに対して、日本人は十二歳の少年ようなもの」、占領軍最高指令長官・マッカサー元帥に、こう評価された日本は、 世紀の後半を、「一億総懺悔」で、歩み出した。さてどうだろう、マッカーサー元帥に、「今の日本は何歳になったのか」と聞いて、その答え、知りたいものではないか。

平成12年11月17日(136号)

 元自民党幹事長の加藤紘一さんが、野党が内閣不信任案を出したら、「反対しない」と言い放った。森内閣の支持率が17 %を割り、あちこちでの失言に「総理としての資質≠笏@何」、とはなはだご不満の体なのだ。この発言に、政権与党の中は大揺れに揺れだした。こういうことを政局が動いた、というらしい。といっても、生々しい権力闘争が公になっただけで、はたして加藤さんが仰るように森さんが総理の椅子からおりたら、国民の未来は開けるのか、これはまったく未知数なのだ。与党内の権力争いが始まると、派閥の名前が飛びだしてくる。主流、反主流と派閥に別れて醜い争いが始まる。こんなことを繰り返すから、国民はまた、政治に嫌気がさしてくるのだ。かつて、政治改革が声たかだかに叫ばれている時、確か、派閥解消が約束された、と思っていたんだが、やっぱり派閥は残っているということが分かった。国民は「総理の資質」を問題にしているんではなく、こんないろんなことを平然と曖昧模糊にしてしまう「自民党の体質」に、疑問を抱いている、ということなのだ。だから、加藤さんが、森さんの代わりに総理に選ばれても、政治に変化が生まれるとは誰も思っていない。興味を持ってみんながみているのは、この後、自民党の次期総裁候補、首相への道に、一番近いところにいるといわれる加藤さんが、どう動くかということなのだ。加藤さんは主流派に、いびり出されるだろうか。離党して新党を作るのだろうか。政権政党内の成り行きに、しばし注目が集まる。■最近の世論調査で、首相候補のナンバーワンは田中眞紀子さんだそうだ。「田中眞紀子が天下を取る日」という本が、今、よく売れている。父・田中角栄の娘として「政治家」としての「帝王学」を学ばされてきたので、政治感覚は、すでに「総理大臣級」だ、と著者は評価する。派閥にはどこにも入っていない。大派閥の親分だった父・田中角栄は、反面教師だ、ときっぱりと言い放つ。よくこんなことが、というように、所属している自民党を堂々と批判する。それでも、だれも田中眞紀子さんの口を封じることは出来ない。自民支持者・非自民支持者を問わず国民的人気は相変わらず高いのは、そういうところなんだろう。何かやってくれそうな、そういった雰囲気に期待が集まっている。首相にしたい人には、他に石原慎太郎東京都知事、土井たか子社民党党首、菅直人民主党幹事長が、上位に入っている。みんな自民党にいいたいことを言っているかたがたである。加藤紘一さんは、こんな風潮にちょっと焦ってしまったのかもしれない。

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